「インプラント手術を上顎へするのは危険?」
「インプラント手術後のトラブルや合併症について知りたい」
「インプラント治療をおこなうリスクを抑える方法が知りたい」
インプラント治療を上顎へするのは危険、そう聞いたことがある方は多いのではないでしょうか。
上顎へのインプラント治療は、下顎への治療と比べて難しく、「上顎洞炎」を引き起こす可能性があるためです。
本記事では、「インプラント治療を上顎へするのは危険なのか、上顎洞炎発症のリスク」を紹介します。
インプラント治療前に上顎洞炎発症リスクを抑える方法まで紹介しているため、ぜひ最後までご覧ください。
上顎へのインプラント治療が危険と言われる理由
上顎へのインプラント治療が危険と言われる理由は、以下の4つです。
- 上顎の骨密度と量が少ない
- 上顎の骨がやわらかい
- 上顎の「前歯」や「奥歯」は治療難易度が高い
- 上顎洞炎発症のリスクがある
それぞれ解説します。
上顎の骨密度と量が少ない
上顎は下顎に比べて骨の密度と量が少なく、インプラントの固定が難しい部位です。
骨が足りないことでインプラントが安定せず、脱落や炎症のリスクが高まります。
たとえば、上顎前歯部では骨幅が狭いことが多く、そのままではインプラントの初期固定が得られにくいため、骨造成術が検討されるケースもあります。
とくに上顎洞との距離が近いため、慎重な対応が必要です。
インプラントを検討する際は、まず骨の状態をしっかり確認することが求められます。
上顎の骨がやわらかい
上顎は海綿骨というやわらかい骨で構成されており、インプラントが安定しにくいのが特徴です。
下顎のような硬い骨とは異なり、しっかりと固定するには追加の処置が必要になるケースもあります。
たとえば、海綿骨が多い上顎ではインプラントの初期固定が不十分になることが多く、長めのインプラントを使用したり、複数本で支える治療計画が立てられる場合もあります。
骨のやわらかさが手術の難易度を高める要因となるため、骨質に応じた適切な治療法を選ぶのが大切です。
上顎の「前歯」や「奥歯」は治療難易度が高い
上顎の前歯は審美的な配慮が求められ、奥歯は咬合力が強くかかるため、どちらも難易度の高い部位です。
前歯部は見た目のバランスをとる必要があるため、ジルコニア製のセラミック冠など、審美性に配慮した素材が選ばれることが一般的です。
奥歯では、インプラントが上顎洞に近く、サイナスリフトが必要になることもあります。
それぞれ異なる技術と知識が必要とされるため、部位ごとのリスクを理解し、経験豊富な歯科医師に相談しましょう。
上顎洞炎発症のリスクがある
上顎インプラントは、上顎洞という空洞の近くに人工歯根を埋め込むため、上顎洞炎を引き起こすリスクがあります。
インプラントが上顎洞に達してしまうと、炎症や感染を引き起こす可能性もあり注意が必要です。
鼻づまりや顔面の痛みなどの症状が現れ、再手術の必要性が出ることもありますが、早期発見できると炎症を防げるケースもあります。
リスクを抑えるには、事前の診断と技術的配慮が欠かせません。
インプラント治療による「上顎洞炎」について
インプラント治療による「上顎洞炎」について解説していきます。
- 上顎洞炎とは
- 上顎洞炎の症状
- 上顎洞炎の原因
- 上顎洞炎になった場合の治療方法
ひとつずつ解説します。
上顎洞炎とは
上顎洞炎とは、上顎にある副鼻腔(上顎洞)に炎症が起こる疾患です。
インプラント治療によって起こるケースでは、鼻や歯の症状が現れることが特徴です。
代表的な症状としては、頬の圧痛、歯の浮いた感じ、悪臭のある鼻水などがあります。
とくに片側だけの顔の痛みや鼻づまりがある場合は、気をつけたいポイントです。
インプラント後の体調変化に敏感になり、異変があればすぐに歯科医へ相談しましょう。
上顎洞炎の症状
上顎洞炎の症状は、以下の2つです。
- 鼻性上顎洞炎
- 歯性上顎洞炎
それぞれ解説します。
鼻性上顎洞炎
鼻性上顎洞炎の症状として、鼻風邪やアレルギーなどによって副鼻腔に炎症が生じ、顔の痛みや鼻詰まりが発生します。
インプラントとは直接関係しませんが、術後の体調に影響する場合もあります。
もし症状が出た場合は、耳鼻科の受診も検討してください。
歯性上顎洞炎
歯性上顎洞炎は、虫歯や根管治療の影響によって、歯の感染が上顎洞へおよぶことで発症します。
インプラントが関与するケースもあり、片側だけの頬の腫れや痛みが特徴です。
歯の治療と並行して、専門的な診断が必要です。
上顎洞炎の原因
上顎洞炎の原因は、以下の3つです。
- 鼻性上顎洞炎
- 歯性上顎洞炎
- インプラント治療による上顎洞炎
ひとつずつ解説します。
鼻性上顎洞炎
鼻性上顎洞炎は、ウイルス感染やアレルギーなどが原因で、鼻腔内から炎症が広がるケースもあります。
インプラントとの直接的な関係は少ないですが、免疫力低下などによって影響を受けやすくなります。
歯性上顎洞炎
歯性上顎洞炎は、虫歯や歯周病、根管治療の不備などで歯の感染が上顎洞へ達することで起こります。
いままでに歯科治療歴がある方は、とくに注意が必要です。
インプラント治療による上顎洞炎
インプラントが、上顎洞に達することで炎症が起こる場合があります。
なお、インプラントが原因で上顎洞炎を引き起こすケースは多くはありませんが、十分な注意が必要です。
治療前の適切な診断と術中の精密治療が求められるため、リスクのある症例では、事前に骨造成などの対策を講じましょう。
上顎洞炎になった場合の治療方法
上顎洞炎になった場合の治療方法は、以下の3つです。
- 薬物治療
- 歯科治療
- 上顎洞根治手術
それぞれ解説します。
薬物治療
上顎洞炎が軽度であれば、抗菌薬や消炎薬などの内服で対応できる場合があります。
症状が出た初期段階で、治療を開始することが大切です。
歯科治療
上顎洞炎の原因となる歯の処置や、インプラントの除去が必要となることもあります。
歯科医師へ相談し、専門的な対応が必要です。
上顎洞根治手術
上顎洞炎が重症化した場合は、上顎洞の膿を取り除く手術(上顎洞根治手術)をおこないます。
この手術では、通常「コールドウェル-ラック法」と呼ばれる方法が用いられ、口腔内から上顎洞に開窓し、膿や炎症組織を取り除きます。
術後は腫れや出血の可能性があり、数日間の安静と定期的な消毒が必要です。
体力的な負担が大きいため、発症を防ぐためにも早期の診断と対応が大切です。
インプラント治療前に上顎洞炎発症リスクを抑える方法
インプラント治療前に上顎洞炎発症リスクを抑える方法は、以下の5つです。
- CTスキャンによる上顎洞の事前検査をおこなう
- 骨造成術(サイナスリフト)を適切に実施する
- 口腔内・全身の健康状態を事前に確認・管理する
- 術前の十分なカウンセリングとリスクの説明を受ける
- 適切な技術を持つ専門医による手術を受ける
ひとつずつ解説します。
CTスキャンによる上顎洞の事前検査をおこなう
インプラント治療を安全に進めるためには、事前に上顎洞の位置や骨の厚みを把握しておくのが重要です。
CT(コンピュータ断層撮影)を用いることで、従来のX線写真では見えにくい三次元的な構造まで確認できます。
たとえば、上顎洞の粘膜肥厚や骨の厚みが薄い場合、埋入時に上顎洞穿孔のリスクが高まります。
事前に確認をおこない、適切な治療計画を立てていきましょう。
骨造成術(サイナスリフト)を適切に実施する
骨が不足している上顎部においては、インプラントの安定性を確保するためにサイナスリフトが有効です。
この術式では、上顎洞の粘膜を持ち上げてその下に骨補填材を挿入し、骨の再生を目指す処置です。
骨高が不足している場合でも、サイナスリフトを併用することで十分な長さのインプラント埋入が可能となる場合もあります。
高い技術力が求められるため、経験豊富な歯科医師による実施が求められます。
口腔内・全身の健康状態を事前に確認・管理する
インプラント治療の成功には、口腔内の清潔と全身状態の安定が欠かせません。
たとえば、歯周病が進行しているとインプラント周囲炎のリスクが高まり、糖尿病のある患者は治癒が遅れやすくなります。
一方これらのリスク因子は、術前の血液検査や歯周精密検査で早期に把握が可能です。
治療前から禁煙や血糖コントロールなど、生活習慣の改善や内科的な管理をおこなうことが、トラブルの回避につながります。
術前の十分なカウンセリングとリスクの説明を受ける
インプラント治療を受けるにあたっては、患者自身がメリットとリスクの両方を正しく理解しておくのが大切です。
たとえば、骨が薄い場合はサイナスリフトや骨移植が必要になり、費用や期間が伸びる可能性があります。
カウンセリングでは、画像を用いて丁寧に説明を受けることで、治療への不安を軽減できます。
不明点を残さず、納得したうえで治療に臨みましょう。
適切な技術を持つ専門医による手術を受ける
上顎インプラントは解剖学的に難易度が高いため、専門的な知識と技術が求められます。
たとえば、日本口腔インプラント学会の専門医は、一定の実績と知識を備えており、高度な外科処置にも対応できる可能性が高いとされています。
また、経験豊富な歯科医はサイナスリフトや骨造成にも習熟していることが多く、合併症のリスクを下げられます。
歯科医院選びの際は、症例実績や最新の設備環境なども確認しておきましょう。
インプラント治療の費用・期間
上顎インプラントでは、サイナスリフトなどの追加処置が必要になることが多く、1本あたりの費用は治療内容や医院によって異なりますが、「30〜60万円程度」となることもあります。
骨造成や手術の難易度によっては、さらに高額になるケースもあります。
治療期間も通常より長く、骨が成熟するまでに6カ月以上かかることも考えられます。
インプラント治療を受ける際は、計画的に治療に取り組むのが大切です。
インプラント治療のリスクを軽減する歯科医院の選び方
インプラント治療のリスクを軽減する歯科医院の選び方は、以下のとおりです。
- 専門医の資格を確認する
- インプラント治療以外の選択肢にも知見があるか確認する
- 治療の症例や実績を確認する
- 丁寧なカウンセリングが受けられるか確認する
- 設備や衛生環境が整っているかを確認する
- 費用は明確か確認する
- 医療の保証制度が整っている
- アフターケアが充実している
- 患者の体調やニーズを配慮した治療計画を立ててくれる
- 患者からの良い評価や口コミがある
インプラント治療の歯科医院の選び方については、下記の記事で詳しく解説しています。
合わせて「インプラント歯科の選び方は?選ぶポイントと考慮するべきリスクを紹介」をご覧ください。
まとめ
インプラント治療を上顎へするのが危険と言われる理由は、「上顎洞炎」を引き起こす可能性があるためです。
インプラントが原因で上顎洞炎を引き起こすケースは多くはありませんが、インプラントが上顎洞に達することで炎症が起こる場合もあるため、もし治療を検討している方は早めに歯科医師へ相談をしてください。
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もし上顎洞炎を引き起こすリスクを軽減しながら、安心してインプラント治療を受けたい方はぜひお気軽にご相談ください。